「清く貧しく美しく」by石田衣良 を読んで
石田衣良さん、けっこう好きな作家さんです。優れた作家さんとは、
男女どちらの気持ちもうまく表すことができるのではないかなって思います。
お洒落な文体もいい。
石田さんはNHKの音楽番組「らららクラシック」で初めて知ったの
ですが、ポツリポツリと良いコメントを放つので、(例えば、バッハの
曲の時など、「一歩一歩、高みを目指して登って行くのがバッハの醍醐味
ですね」というコメントはさすが作家さんだ!と感動しました。)
やっぱり作家さんって見つめる力というか、洞察力や表現力が違うな~
と思いました。
もっと続けて欲しかったなぁ~。
いま坂上忍の昼番組にたまに出演されていますね。生衣良も嬉しいが、
やはりNHKとか格調高い系でしゃべっている姿が見たい!
すみません話がそれました。
本の内容はアルバイトのアラサー日菜子と堅志のラブストーリー。
二人とも負け組の暮らしをしているが、お互いを思いやり、
一日に一度は互いを褒め、慎ましくも楽しく暮らしている。
ところが堅志に正規社員になれるチャンスが巡ってきて、
元カノがその正社員だったり。
日菜子も新たな男性に告白されて、どうなる~?
(あとはネタバレになるので詳しくは伏せます。)
日菜子は繊細でで人付き合いも苦手な方だが、料理が上手く、
仕事もきちんとこなす。近所のシンママの子供に夕飯を振る舞う
など、優しい。堅志も優しく正義感があって、アパートの迷惑住民との
トラブルを切り抜けて、そこから近所付き合いが始まったり、
昔の友人から本の書評を頼まれて、評判が良く、
物書きとしての可能性を感じたりとか。生きる迷いとか焦りの中でも、
ふたりの日々の何気ないやり取りの中に、さりげない愛情が
感じられて心が温まりました。二人のささやかな幸せがいつまでも
続いて欲しいとつい願ってしまう。石田ワールドです。
最後で、自分は会社員として生きるのを辞めるシーンが、何か
衣良さんが作家として生きる決心みたいなのと重なって見えたのは
圧巻と言うか、感動ポイントです。(※ あくまで私個人の見解です)
「ひとりの会社員としては、そちらのほうが幸せな生き方かもしれない。
毎年、革靴とスーツをワードローブに増やし、夏には海外旅行に(中略)
そんな生活を2,3年送れば菊川仁の小説を胸に突き刺さるような
痛みと共に読むことは到底できなくなるだろう。自分は変わってしまうのだ」
やっぱり作家とか画家として生きて行くには安定を棄てる覚悟が
ないといい作品も生み出せないのかもしれません。ゴッホなんか
「これで食べていく!」とか考える以前に、絵を描かずにいられない、
絵を描いて自分を表現することこそが、そのまま生きることの人もいる。
それがああいった作品たちで、魂をカンバスに思いっきりぶつけたのが
今、私たち見る者の心を揺さぶってくれる。
(〇市〇寿さんも某首相夫人と仲良しごっことか朝のワイドショー出演を辞めて
執筆に専念すれば芥川賞だっていけるんじゃないかと思っています。
余計なお世話ですけどね。)
衣良さんの作品は人に対する温もりというか、優しさを
感じます。またさりげないところがいいんですよね。
長文、読んで下さってありがとうございました。
( ホットケーキミックス買えなくて、ついイラッとして
しまった自分が小さいな~と思って、衣良さんの本読んで
優しい気持ちになりましたっ(^◇^)